6月7日、関東甲信越地方が梅雨入りしたにもかかわらず、好天気の中、田無手をつなぐ親の会の12人のメンバーは、栃木県足利市にある「社会福祉法人 こころみる会」が運営する「こころみ学園」を訪問、視察しました。
佐井正治さん(指定障害者支援施設こころみ学園事務局長、有限会社 ココ・ファーム・ワイナリー総合事業部長)より、こころみ学園とココ・ファーム・ワイナリーの歴史について、丁寧な説明を受けました。
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・昭和33年当時中学校の特殊学級の教員だった川田昇園長と特殊学級の生徒たちが中心となって2年がかりで勾配38度の急斜面3ヘクタールを開墾した。
・川田園長は、果実を作りたいと考えていた。葡萄にした理由は、「葡萄は、1年間コンスタントに作業でき、加工ができる。また、ワインを作ったらかっこいいし、旨いものを作りたい」との考えだった。
・こころみ学園創立のきっかけとなったのは、昭和41年千葉の施設の立ち上げに川田園長が立ち会った時の経験だった。
冷暖房完備の立派な施設ができたにも関わらず、日ごとに利用者の目の輝きがなくなってきて、文句ばかり言うようになってきた。この姿をみて、「豊かではなく、貧乏でも汗を流せる施設、家族のように」をモットーに自分のできる事を見つけ、「できる事をできる範囲でやっていこう。繰り返し頑張っていこう」という理念が生まれた。
・こういった経緯を経て、昭和44年、30名収容の施設「こころみ学園」が創設され、葡萄と椎茸の栽培を中心にした農作業を通じて園生の心身の健康を目指すこととなった。
<作業の内容(1)>
・シイタケ栽培のために原木運びをする。
・ナラ、クヌギの木を自分で切る。山の中で90センチに切りそろえる。
・ドリルで穴をあけ椎茸の菌を入れる
・山の中に置いておく。置いた木をたたいて刺激を与える。
・葡萄畑では草刈に汗を流す。全て草刈が終わったころには、また最初に刈ったところから草が生えてくるので、切りのない繰り返しの作業が続く。
・こういった作業を繰り返すことで、筋力、バランス感覚もつき、集中して作業できるようになった。集中して作業できるようになったら人の話を聞けるようになった。
<作業の内容(2)>
このような作業ができるようになった人は、次のようなプロに育つ。
・入所者100名分の洗濯を10名で行う。
・園生4~5名と職員とで200名近い食事を作る。
・所内の掃除を園生2~3名で行う。
・1日1万本のワインの製造工程中の検品作業を担当する。瓶詰めされたワインの中にコルクダストが入っていないか、検査するプロである。
工程を細分化し、自分のできることを見つけ、できる範囲で繰り返し頑張ることで、誰もが「○○のプロ」になる。
<施設の概要>
・現在、障害者支援施設『こころみ学園』は、施設入所支援94名、短期入所定員10名。入所者の平均年齢は、57歳、最高齢は95歳、リハビリだけの人も増加している。
・「こころみる会」では、この他に、多機能型事業所(生活介護、就労継続支援B型)、更には共同生活援助事業所を7カ所運営しているという大規模法人。
・最後の看取りまで行っている。墓地もあり、数年前に亡くなった川田園長もここに眠っている。
・入所者の中には、認知症になった人も1名いるが、そのような状態になっても、家族のように支えて行く、とのこと。
<ココ・ファーム・ワイナリー>
・ブドウ畑で収穫されたブドウは、山中にトンネルを掘って建設された「こころみ学園のココ・ファーム・ワイナリー」で醸造され、今では世界的に知られた名ワインとして出荷されている。
私たちは事務所で『こころみ学園』について説明を受けた後、ワイナリーを見学、山の中とは思えないような明るいテイスティング・コーナーで試飲し、隣接の洒落たレストランでランチを楽しみ、帰路につきました。
施設の軒下にはツバメの巣がたくさんあり、子育ての真っ最中、親ツバメがたくさん飛び交い、餌を運んでいました。
………………… 視察後記(小矢野 和子)………………
こころみ学園の経営理念、また、川田園長の思いをずっと引き継いで実行されている姿に胸の熱くなる思いでした。
区分4~6までの行動障害を持った人や、重度の人を受け入れている施設ですが、環境、対応の仕方でこんなにも皆さんが生き生きと生活できていることを知りました。
職員の採用と確保が一番の問題とのことでした。こういった環境を作るのは容易ではないと思いますが、私たちも、参考にできる所は取り入れて、重度、軽度に関係なく取り組めるのではないかと思いました。
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