12月17日(土)午後、西東京市における共生社会の実現 ~困難を抱える方を含め、どのような地域を作っていくのか~ というシンポジウムを聴きに行って来た。
健康福祉部の後藤氏より以下のような説明があった。
2月6日に第1回目の共生社会シンポジウムがあり、今回は第2回目とのこと
今回は、実践をしている人を呼び、居場所について理解し、西東京市においての実践について考える会にしたいとのこと。
西東京市民会館・公会堂、500人収容のホールに400人は参加していたように思う。
13時半に丸山市長の挨拶から始まって終了は16時半を過ぎていた。
丸山市長のお話の中では、現在西東京市の人口は、20万12名で、認知症の方は、約5000名、障害の方は、約1万5千名とのこと。市民全体の問題として共生社会の実現を考えなければとのお話だった。
「共生社会実現のための地域づくり=居場所づくり」について、東洋大学の森田明美教授の総括講演があり、続いて、みわ内科クリニック・三輪隆子院長、社協生活支援コーディネーター・利光有紀さん、日本福祉大学・綿祐二教授、NPO法人サポートハウス年輪・安岡厚子理事長、学び塾「猫の足あと」・岸田久恵代表の5人がパネリストとして語り合った。
森田明美教授からは、子供が抱える家庭との確執、これは虐待・貧困・地域環境の悪化・ひとり親家庭の増加などが挙げられるが、家庭の多様化によってもたらされた現状に対する取り組みの必要性について、識見が述べられた。子どもや若者は家族・親族の支援が受けにくくなっているにも関わらず、それに対し社会的な支援が十分に伴っていないことが指摘された。一方で、子供・若者支援は、自己(家族)責任が前提とされる社会風潮の中では、行政や社会からの支援が難しいことがますます浮き彫りにされて来ていると説明があった。このような状況では、今後は子どもだけを対象にせず、つまり課題別の支援から家族全体を包括する自治体による支援への取り組みの強化=包括支援の重要性=が説かれた。自治体支援とは、すなわち、コミュニティ(地域)での支援・連携活動=地域トータルケアシステム=である。
その後、3人のパネリストから、それぞれの体験談が紹介された。
三輪隆子院長からは、2016年6月に立ち上げた「(認知症カフェオレンジ・カフェ)」についての紹介があった。認知症の方、その家族、専門家、認知症に関心のある方、地域の住民の方などが気軽に集まり交流を楽しんだり情報交換する場。
オレンジカフェ保谷駅前は毎月第3木曜日14時~16時まで、保谷駅前ステアビル5階 保谷駅前公民館第4会議室にて、お茶代 100円予約不要。
家族・本人・が笑顔になることが大事だとのお話。
年輪の安岡厚子代表からは、1994年に「介護と食があれば生活できる」という考え方に基づいて設立した「年輪」は、老いの問題は、地域住民みんなの問題であると位置付けることにより、地域みんなで総合的にサポートするシステムを作ることを目指している。カフェ「絆」は、 月~金(11時~16時)コーヒ、紅茶は100円、お菓子付き150円、
ランチ弁当は550円(お茶サービス)、パンの販売は、毎週水曜日、各種イベント(布遊び、ランチ会、ウクレレ、落語、子供パン教室、トレガ―アプローチ、着物リメイク)を行っており、2016年8月より毎月第1日曜日には、カフェ「絆」で子ども食堂を始めた。
(子ども50円、大人300円) 子ども食堂は、ふらりと寄れるみんなの食堂&居場所にしていきたいとのお話。
そして、塾に通えない中学3年生を対象に無料の学び塾「猫の足あと」を2011年に開設した元小学校教員・岸田久恵さんは、立ち上げから今日までの運営の裏話、苦労話を紹介された。熱心に学ぶ生徒たち。わかる喜びがさらに意欲へ。教える側もやりがいを感じて。ひとりひとりの課題に沿った指導へ。支援する側の喜び、繋がり、広がる喜びがある、とのお話だった。
3人のパネリストの信念・信条に基づく「それぞれの居場所づくり」についての説明、「どんな人とも共生する」社会づくりを実践した3人の体験談、これは場内に大きな感銘と共感を広げた。
さらにパネリストのお話は続く。
西東京市社会福祉協議会(社協)の利光有紀さんから社協における地域づくりの説明があった。
地域サポート「りんく」について
社協が西東京市より委託事業として27年度より始まった。介護保険法に基づき、生活支援コーディネーターを5名配置している。田無総合福祉センター4階にある。事業内容は、①ささえあいネットワーク事業、 ➁介護支援ボランティアポイント制度、③地域サポート連絡会(協議体)を行っている。
社協の小地域活動としてふれあいのまちづくり 住民懇談会を小学校区を1つの単位として住民活動組織づくりを行っている。毎月1回住民懇談会を開催している。
今年で25周年となる。
また社協の居場所づくりとして、地域福祉活動拠点を現在市内7か所に設置している。
地域活動(サロン、喫茶活動、食事会、会合、学習会、イベント等)を目的とする活動を対象に貸し出している。また、大掃除や草むしりなどの施設維持は、団体の協力を得て行っている。
社協の居場所づくりとして「地域の縁側プロジェクト」を現在19箇所に設置。
地域福祉コーディネーターと連携して気軽に誰でも立ち寄れる場所、地域で孤立した方や、話を聞いてほしい方々を支え、つなぐ場所として運営されています。誰でもほっと一息つける場所を提供している活動です。
また介護保険・市の総合事業として
〝街中(まちなか)いこいーなサロン”(介護予防・日常生活支援総合事業
住民主体の通所型サービスB)を実施。
このサロン活動は、住民の方々が経営する気軽に参加できる‘集いの場です
気軽に相談する所を見つける事が狙い。無理をしないで運営者も楽しみながら
細く長く続く活動にしたい。支援する側と支援される側の関係づくりが目的。
社協の事業は、広範囲であることから事業は拡大するが、その分、使う側が
内容をしっかりと把握し、自分に合ったサービスはどれかがすぐに把握できるような、わかりやすい情報提供が課題かと感じた。
そして、綿祐二先生の話。32年間、障害者と共に生活している経験・体験から滲み出るもので、迫力があった。
聴いていて印象に残ったことを次に書き留めておく。
①2016年4月に施行された「障害者差別解消法」 → なぜ「障害者差別禁止法」ではなかったか。
答えは、禁止するまでに地域にある差別習慣を解消する必要があり、いきなり禁止という訳にはいかず、禁止へ持って行くための期間がまだまだ必要だから。
②妊婦が「出生前診断」を受けて、染色体異常=陽性反応だと聞かされた時、妊婦の94%は人口妊娠中絶を選択するという現実。(「相模原の事件」の前、7月16日の新聞に掲載されていた。「障害者なんていなくなればいい」の犯人の言葉は、他人事には思えないことを示している。)
③2016年10月に市がオープンした地域活動支援センター「ブルーム」は知的障害者を主な対象とした初めての「居場所」である。ここで相談支援事業、創作的活動などが行われ、障害者の自立を支える。
④「共生社会」の実現のためには、
・権利だけ主張していてもだめで、義務も果たさなければならない。迷惑をかけたらごめんなさい。と謝ることが大事。
・お互いの困難性(生き辛さ)を理解することが大切。
(待てないという困難さを持っていることを理解してもらう)
今回、障害関係以外の方が、多く来られた中でのお話は、とても意義深いものだと思った。 それぞれの発表の後、第2部は居場所づくりに対して何ができるのか?のパネルディスカッションがあった。
障害者は、歳をとったら障害も伴うが高齢者である。だとすると、カフェ「絆」を利用できるのかな?また、軽い障害の方ならば、猫の足あとで学ぶこともありなのか?障害者の親は、周りに迷惑を掛けないようにと考える話を綿氏がされた。すると、迷惑かけたらいけないのですか?障害のない人も迷惑を掛けたりしているよね。地域で暮らしていくためには、迷惑かけて いいのだと思わないと、生活していけないと事業所の方が話された。有難い話である。
【今回のシンポジウムを振り返って】
いつも講演会では、障害者関係の方ばかりの集まりだが、今回は、「共生」ということで、あらゆる分野の方との出会いがあり、社会資源が広がる可能性を感じることが出来た。障害を持った人たちが、これからは、社会に積極的に出かけて周りの方との触れ合いを持つように努力していくことが必要だと感じた。(小矢野)